初めてのアーユルヴェーダ

第3週目のトリートメント(6月25日〜30日)

さて、3週目はいよいよ待望の「シロダーラ」(額にオイルをたらし続ける頭のマッサージ)!ここでは、どんなに頼んでも、シロダーラは3週目にしかやらないーと先生は断言していた。何故なら、シロダーラは脳にダイレクトに働きかけるトリートメントなので、疲労を溜めまくった体でリラックスしない内に施すと危険でさえあるんだとか。最初に渡されたアーユルヴェーダ治療に関する説明書には、「第3週目の集中トリートメントでは、身体が内側ですべてを作り変える作業をします。そのため一時的に体は非常にセンシティブにか弱くなっています。この時期はTV・PCを見ない。本を読まない。人と議論しない。運動などしない。部屋の中でできるだけ静かに過ごすことを守って下さい。」と書かれていた。


ここでの滞在は一人だが、朝のヨガから夜の食事まで、1日にやることはいっぱいある。ジムに行けばサッカー好きのスタッフと昨日の試合の話で盛り上がり(ドイツでWCがあった時期だった)、食事の時はレストランで、同じく治療で滞在している他のゲストとおしゃべりしたり(と言っても、あまり英語ができないので大変だったが)、退屈している暇はなかった。ところが、今週に限り、ヨガさえ禁止で、長い1日でやることは1時間半のトリートメントだけ。食事も基本は部屋で一人で食べることになっている。今までは3:00PMからがトリートメントだったのだが、この集中時期は朝7:00からの施術となっているので、8:30にトリートメントが終わったら、もう1日することがないのだ。
正直、これにはまいった。本当に退屈なのだ。気が狂いそうだったので、先生に訴えたら「音楽でも聴く?好きなCDを貸すわ。」と言われ、CDを借りたが、そんなんじゃしのげない。おりしも、その週はワールドカップのセミファイナル。「せめてサッカーでも見なきゃ、マジで気い狂う!!」と、毎晩こっそり部屋でTVは見てました。

さて、どれだけこの集中トリートメントが特別かというと、初日私のトリートメントに集まった7人(!)のセラピストは、全員で神様に長い祈りと歌を捧げ、ベッドを火で清めてからトリートメントに臨んだ。額にオイルをたらす「シロダーラ」と同時に、身体には温かいオイルをパート別に左右同時にかけていく。これが、ものすごく気持ちいい!!ただオイルをかけられるだけなのだが、なんだか自分がみるみる溶けていく。「シロダーラ」はセラピスト2人が注意深く、髪の生え際にオイルを行ったり来たりさせている。身体の「オイルバス」は、2人がオイルをかけ、2人が流れるオイルを絶え間なく集め、もう一人は集められたオイルを火で温める役目。こんなに贅沢なトリートメントは初めて!多分深い瞑想状態に導かれているのだろう、私は半ば意識を失いながら、毎日身も心も溶かされていた。

説明書にあったように体内・脳内ともにリノベーションされていたのだろう、ある日は眩暈がしたし、ひどい眠気に襲われたり、排尿回数が異常に多い日もあった。確かに普通とは違う状態だった。

朝は溶かされ、その後は気も狂わんばかりの退屈と戦って4日目。トリートメントが終わって部屋で休んでいた時、ふと気付いた。「あら??今日はイライラしていない!」退屈を感じていなかった。なんだか心が平安で、静寂を楽しんでいる自分がいた。これってスゴイ!これが「アーユルヴェーダ」の真髄ではないか!
次の日、トリートメント前の診断で、先生にそれを話すと、彼女は無言で微笑んでいた。

「集中トリートメントが終わる日は、生まれ変わった体を祝うセレモニーをするのよ!」と先生に言われたとおり、最終日のトリートメントが終わったら、見学者(短期滞在で集中を受けられない患者とか)も呼んで、先生も加わり、本当にお祭りをした。ベッドに花や食べ物を供えて、私が聖水をかけ、セラピスト達は歌い祈る。神棚も特別なお供え物で飾られている。最後にお供物のお菓子をもらった。先生に少し食べるよう言われ、3週間ぶりに甘いものを食べる。これでまた溶かされる!よくわからないけど、本当にいい気分。今までにない解放感がある。